こんにちは波田須です。岐阜県美山町の「北山」に登りました。
  拙文を送らせて頂きます。一読いただければ幸いです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー2000. 5.31
             「北山(908m)」山旅
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーS.Hadasu
 
  日時  ：  2000年 5月 13日(土)   曇り 

  西山秀夫編「ひと味違う名古屋からの山旅」で見つけた北山。花好きの友
  Ｓさんを誘う。彼の愛車(カーナビ付)で出発 7:00。豊田ICから東名経由
  で東海北陸自動車道を美濃ICまで走る。「うだつの町並み」で知られた
  美濃市を通り抜ける。新美濃橋で長良川を渡り、新緑の映える清流「板取
  川(長良川の支流)」の左岸を溯る。
  
  釣り人(鮎、あまごなど)の集まる板取川、鮎の美味しさは折り紙付きと
  紹介されている。「美濃和紙の里会館(紙すき体験可)」を過ぎ橋を渡り
  洞戸村に入る。幹線から外れた道に入るとカーナビが頼りになる。

  一昨年、夫婦で旅した夏の北海道。カーナビ付のレンタカーで道東のドライ
  ブを楽しんだ。ルートをミスしてもカーナビで現在地を確めればすぐ修正
  でき、１日千円で夫婦喧嘩を予防出来るハイテクは有り難かった。しかし
  「はじめてのカーナビ」には落とし穴が・・・走行中、家内がボタンに触れ
  ると現在地が出なくなった。車を止めマニアルを見てボタンと格闘、喧嘩に
  なりかけたがなんとか画面が戻り事無きを得た。

  柿野川(板取川の支流)に沿って上流へ向う。看板「ホタルの里」の立つ集落
  まで来たがここから先、登山口のある西洞への道はカーナビの地図に無い。
  集落の外れで道を聞き小さな橋を渡り、車１台がやっと通れる林道に入る。
  すれ違い箇所も少なく何処まで行けるのか不安になるが、対向車もなく渓流
  沿いに４km 溯り石碑の立つ登山口に着く。9:30

  まだ新しい碑には『西洞の人家分布図』が刻まれている。今は１軒を残すの
  みだが、こんな山奥にもお宮さんや分校を持ち、水車が回る40軒ほどの集落
  があった事に驚かされる。碑の背後には一抱えぐらいの丸い「青年の力石」
  がある。この石を持ち上げる事が青年の証だったのだろうか？ 
  望郷の碑を見ていると村を出た人達の「忘れがたきふるさと」への熱い思い
  が伝わって来る。

  碑の脇から登山道が始まる。沢沿いに暗い植林の森を進み、鉄塔巡視用の
  標識で沢を渡りジグザグに登る。高度を上げると、新緑が鮮やかな明るい
  自然林(ブナ、カエデ、クヌギ)の道となる。花は山吹、ニリンソウ、ユキザ
  サ、トリガタハンショウヅルが旬。花期は過ぎたがカタクリも多く、ミスミ
  ソウも目に留まる。山頂近くの斜面に広がるニリンソウの大きな群落を見つ
  けてＳさんは満足そう。

  反射板のある所が山頂。11:40  雨を呼びそうな雲がかかり展望は良くない。
  三角点を囲んで昼食。同じ道で下山 14:00。登山者との出会いも無く訪問者
  の少ない山と言えそう。洞戸村まで戻り、温泉のある板取川上流へ向う。

  蕪山の山麓にある「21世紀の森」に寄り道して樹齢 400〜500年の珍しい
  「株杉の森」を散策する。株杉は太い幹が地上２〜６mの所で手を広げた様に
  複数の普通の杉に分かれる。ひとつの株から10本以上の杉が直立する見事な
  株杉もある。
     
  板取川温泉は弱アルカリ性で露天風呂(冷鉱泉)と内風呂(低温泉)がある。
  裸になると足から血が出ている。良く見ると右足に４ヵ所、左足に２ヵ所
  丸い傷痕(米粒大)がある。血を吸われている時は気付かなかったが
  『ヤマビル』の仕業に違いない。Ｓさんも顎と足に血がにじんでいる。

  ヤマビルは足元や樹上から人や獣に付着する。伸縮自在なのでわずかなすき
  まから侵入し、凝血阻止と神経を麻痺させる分泌物を出して血を吸う。１度
  に体重の10倍の血を吸い長い時間をかけ消化する。年２〜３回吸血すれば生
  きていける。吸われている時に無理矢理はがすと細かい歯が残り化膿する事
  がある。やっかいな吸血鬼だがタバコの火を押し付ければ取れると本には書
  いてある。

  風呂あがり素足で登山靴を履くと異物感？ 靴をひっくり返すと血を吸い太っ
  たナメクジ大のヤマビルが１匹ぽろり。体を伸縮させながら(まるでゴム紐)
  前後端の吸盤で尺取虫の様に歩く姿はユーモラス。血を分けた「はじめての
  ヤマビル」を踏みつける気にはならず、茂みに消えるのを見送った。

  温泉の隣に土産物屋兼食堂がある。川魚料理のメニューもあるが食堂の開店
  まで１時間は待てない。板取川の魚は味わえなかったが、望郷の碑と吸血鬼
  の出現でひと味もふた味も違う山旅となった。                  完

  追：ヤマビルの吸い傷は痒みが消えるのに１週間、にきび大の腫れがひく
      のに２週間を要した。